障害平等研修について

障害平等研修(Disability Equality Training: DET)とは、障害者自身がファシリテーター(対話の進行役)となって進める障害学習です。企業や自治体などの組織を対象に、発見型学習という対話に基づく方法を用い、障害者を排除しないインクルーシブな組織づくりを参加者と一緒に考えていく研修です。
ファシリテーターは、障害をめぐる対話の進行役を務めます。
障害とは障害者の社会参加を阻む障壁であるという「障害の社会モデル」の考え方を基礎に、発見型学習という方法論を用いて対話を進めていきます。

障害平等研修は英国で障害者差別禁止法(1995年施行)を推進するための研修として発展してきました。女性差別(ジェンダー)や人種差別に関する人権教育と同様の目的を持った研修です。

行動志向型の研修

DETの目的は、障害についての知識の獲得でなく、参加者が所属する組織における障害者差別や排除の状況を分析し、参加者自身がそれを変えていく行動の主体となることです。

行動へのポイント

障害の社会モデルの視点の獲得

差別や排除、参加の制約としての障害という課題を見抜く社会分析の視点を獲得すること。

差別の解消や合理的配慮のための具体的な行動の獲得

多様性に基づいた共生社会を作り出す具体的な行動を作り出すこと。

DETの特徴

発見型学習

DETの目的は参加者が共生社会を形成するために行動することです。講義形式の方法ではこの行動という結果を得ることは難しいです。問題の発見と解決策の創造というプロセスを作り出す発見型学習という方法が重要です。パウロ・フレイレが理論化した批判的社会認識の方法論を基礎にしたもので、課題提示教材(課題状況を示す絵やビデオ)と発見を促す質問(課題の分析を促す質問)を用い、対話型のワークショップとして行います。

障害者自身がファシリテーター

障害を理解する最善の方法は障害者と日常の生活を共にすることでしょう。しかし、残念ながら私たちはそういう共生の機会を学校でも職場でも奪われてきました。その結果、周りに多様な人たちがいない状況を“普通”だと思っています。DETでは研修という形の中で、障害者と対話する場と時間を作り出し共生社会を形成するプロセスとしたいと考えています。

DETフォーラムでは80時間の養成講座によって障害者自身をDETのファシリテーターとして育成しています。

障害平等研修の流れ

会社や自治体、学校や団体などに対して3時間~1日のワークショップとして実施します。(実施時間は応相談)。20~30名前後の参加者が小グループに分かれ、ファシリテーターがイラストやビデオなどの課題提示教材を用いながら障害についての対話を進めていきます。

前半(90分)

差別や排除としての障害を見抜く分析の視点としての障害の社会モデル視点の獲得

車イスに乗った女性の絵
例えば、左図を見て「障害はどこにあるか?」を議論します。小グループごとにどこに障害があるかを決め、スクリーンに映し出されたこのイラストの上に実際に付箋を貼っていきます。

脚に貼る人もいれば、階段に貼る人もいるし、入り口の矢印案内に貼るグループもあります。それらの異なる意見から、障害はどこにあるのかということを全員で議論しながら障害について考えていきます。

後半(90分)

社会モデルの視点をもとに、共生社会を組織また個人として作り出す具体的な解決行動を考えます。

箱と星のイラスト
差別場面のビデオを見て、なにが差別か、なぜ差別が作られたのか、どう解決するのか、をグループで分析していく作業を通して、障害の社会モデルの視点と具体的な解決方法を考える力を獲得していきます。

この研修の間、ファシリテーターは答えを言うことはありません。「何が」「どうして」「なぜ」「どうする」といった質問を積み重ねていきます。答えは参加者自身がファシリテーターとの対話やグループでの議論を通して見つけ出していきます。

これが発見型学習という方法です。

世界におけるDETの状況

世界39か国で約500名のファシリテーターが育成され、DETに取り組んでいます。海外の航空会社や大手スーパーマーケットでも実施されています。
詳細は英語版のホームページを参照してください。

障害平等研修を更に知るためには

パンフレット

下記のボタンをクリックする事により障害平等研修フォーラムのパンフレットのダウンロードが可能です。是非ご覧ください。

書籍

・久野研二編著(2018)「社会の障害を見つけよう:一人ひとりが主役の障害平等研修」、現代書館

公的文書

・内閣官房(2017)「ユニバーサルデザインの社会づくりにむけた試行プロジェクト」報告書(該当頁:21-84 頁)。障害平等研修の研修効果に関する実証研究調査結果です。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/udsuisin/pdf/201703_hokoku.pdf

その他

・以下の新聞で障害平等研修がオリンピック・パラリンピック東京 2020 の大会ボランティア
(フィールドキャスト)の研修で8万人が受講していることが記事として取り上げられています。
毎日新聞:2019 年 12 月 22 日朝刊(31 頁)「当事者と学ぶ DET(障害平等研修)」
読売新聞:2020 年 1 月 22 日夕刊(11 頁)「障害とは?広がる学び」

お問合せお待ちしております。

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